蓮尾 高志: 神経力学系を用いた情報処理  

着想

 

自律分散システムとしての脳に興味を持っており、異なる情報を処理する自律ダイナミクス同士の相互作用により,複雑な情報処理が実現されると考えている。多数の力学系を相互作用させることで、単一力学系ではできない処理を可能にすることを目指す。

 

動的不感化の原理

 

連続的に変化する修飾パターンに応じて,神経回路網のつくる力学系(神経力学系)を動的に変化させる方法を提案した.

力学系が変化することで,パターンの繰り返しや部分的な重複を含む,複雑な時空間パターンを想起することが出来る.

また,修飾パターンの与え方によって,想起の速度を制御することが可能である.

 

 

球体:n次元の状態空間

矢印:パターン空間における状態遷移の軌道

平面:修飾パターンに応じて変化する部分空間

神経力学系の相互作用

 

複数の神経力学系が,動的不感化を介して,相互に力学系を変化させるモデルを構築した.

それぞれの回路網は独立に学習することが出来,両者を結ぶのは素子数と同数の固定結合のみであるなど,モジュール性が高い.

さらに重要なのは,2つの回路網を従来の方法で連結すると,ダイナミクスはそのままで単に素子数が2倍の神経力学系が出来るだけであるのに対し,両者を動的不感化によって結合するのは,それとは全く異なるということである.そのため,単一の神経力学系では出来ない処理が可能であり,また多数の回路網を同様に結合すれば,より複雑で高度な情報処理が実現できると考えられる.

 

          

     

 

 

また,右図のような固有空間解析を施すと,2つの神経力学系が協調的に動作している時は記憶空間の成分が増加し,そうでないときは,ノイズ空間の成分が増加するといった結果が得られた.この結果は,神経力学系の相互作用による情報処理において,様々な知見を与えるものである.

 

文脈依存的時空間パターンの処理

 

神経力学系間の相互作用に基づく動的連想記憶モデルにより,文脈依存的な時空間パターンの処理を実現した.

下側の回路網(入力部)が外部から入力される時空間パターンを,もう一方(文脈部)は入力パターンの履歴をそれぞれ扱う.

このモデルは,ある系列の時空間パターンを入力部に入力すると,その系列を認識し,それ以降を想起することが出来る.

また,ノイズや時間方向の伸縮に強いという頑健性をもつこともわかった.

 

 

 

 

 

 


© 2006 Takashi Hasuo Sat, 2007-06-02 4:42 pm