概要: 分散情報表現を用いた神経回路網において,同じ入力から文脈に応じて異なるパターンを連想する際には,主に入力パターンに文脈を表すパターンを連結する方法が用いられてきた.しかし,この方法には本質的な問題点があり,入力及び文脈パターンの数に関して強い制約が生じていた.本論文では,これとは異なる文脈修飾の方式を非単調神経回路網に適用することによって,従来の問題点を解決する文脈依存的連想モデルを構築する.このモデルでは,入力及び文脈パターン数に関係なく,学習できる連合の数が素子数にほぼ比例して増加する.また,文脈を切り替えることによって,アトラクタ間の状態遷移を自在に制御することができる.本モデルは,素子数や学習時間の爆発を招くことなく任意の有限オートマトンの動作を模擬可能であると同時に,完全な分散表現に基づく高い汎化能力を備えており,従来の記号処理の限界を打破する可能性を秘めている.
キーワード: 非単調連想モデル,軌道アトラクタ,積型文脈修飾,文脈主導型連想,有限オートマトン